離婚にまつわるメンタルヘルス

平成30年の統計では、日本の離婚率は約35%とも言われ、3組に1組が離婚という結末をむかえている。しかし、近年では離婚の捉え方も様々で、離婚=不幸という方程式が必ずしも成り立つわけでもない。

そもそもどうやって離婚するするのか?

離婚に関しては、主に3つのルートが存在する。

 

①まずは、当事者同士の話し合いの結果、お互いが納得した上で署名捺印を交わし、離婚届を提出する【協議離婚】である。離婚届には、未成年の子どもに関する親権者の取り決めなどを定める欄もあり、婚姻関係解消に関する方向性が、当事者同士の話し合いによって取り決められた後、役所に提出することで法律的に婚姻関係が解消される。いわゆる円満離婚と言われるものだ。

しかし世の中そんなにうまくはいくものでもない。
②お互いの財産分与や子どもの親権、養育費、慰謝料など、片方が離婚に関して納得できず、家庭裁判所などの行政に介入してもらい、専門の調停委員の介入によって話し合うのが【調停離婚】である。お互いの性格の不一致や価値観や生き方そのものの捉え方などが原因にも挙げられ、当事者同士では平行線のまま関係がより悪化の一途に向かうこともよく聞く話だ。

③弁護士や行政機関などによる第三者が介入したにも関わらず、調停が成立しない場合、裁判官等に判断してもらうのがいわゆる【裁判離婚】と言われるものだ。裁判では、財産分与に関して細かい取り決めなどが数多くあり、預貯金だけでなく、夫婦関係でお互いに協力して築いてきた財産に関しても分与の対象になる。また、子どもの学資ローンや住宅ローンも財産分与の対象になってくることから、弁護士等の第三者が介入しながらその取り決めについて明確にしていく。離婚成立まで長時間、長期間かかることも多く、そのストレスは男女問わず重くのしかかる。

主な流れとしては、協議離婚<調停離婚<裁判離婚となるほど労力が増え、生活面や仕事面、そしてメンタルヘルス面にも大きな影響を及ぼすことが容易に想像できる。

メンタルヘルス

離婚手続きでは、相手の言い分なども考慮に入れた今後の見立てについて話し合う。時に相手の感情を逆撫でてしまうことがあったり、反対に人格を否定されるような言葉に晒されてしまう。
そういった面で、自分にとって味方となってくれる相手を見つめておくことは精神的な安定につながるだろう。専任の弁護士だけでなく、【法テラス】などの無料相談などを活用しながら一人で戦わないことが重要と言える。

弁護士ごとに着手金や成功報酬による報酬規定を定めているところもあり、見積もり等をとっておく必要がある。なかには離婚を専門とするカウンセラーと連携をとりながら、離婚までの長い道のりをサポートしてくれるところもあると聞く。

最後の一歩が踏み出せない

離婚を考える多くの女性(今回は女性側の目線から)が自分の我慢を低く価値下げしてしまう傾向がある。価値下げとは、自分がこれまでしてきた努力や我慢を『私が我慢できなかったから離婚に至ってしまった。』と自己評価を低く見積もってしまうことだ。特に2007年以前は、年金分割制度が整備されておらず、離婚したくても夫が加入している厚生年金などを受け取る土壌が整っていなかったためか、泣き寝入りするように我慢を虐げられていた女性も多くいただろう。

その反面、こうした年金分割制度ができたからこそ離婚率の上昇も考えられており、リ・スタートを切りやすくなっと捉えるか、結婚の価値観が変わりつつある現状が伺える。近年多く取り上げられている熟年離婚の背景には、相手の親の介護に関する負担意外にも、このようなお金の事情があるのかもしれない。

【自分の押し殺して我慢を貫き、最後まで離婚せずに一生添い遂げる】ことは現代ではもう通用しなくなっているのかもしれない。もちろん結婚・離婚の価値観はそれぞれ持っているものであり、どれが正しいとか間違っているというものでもない。

自分の人生を自立して歩くためには、相手に依存し過ぎず、自分で立ち上がる決意と行動力が必要となり、きっと離婚に至る経緯には、計り知れない心理的な負担が積み重なってきたのだろう・・・。

離婚によるリ・スタートに失敗しないコツ

■メモにまとめよう
■子どもがいるのなら養育費について計算してみよう
■ふたりの資産とはなにかまとめてみよう
■離婚の理由が相手の過失(暴力や不貞行為、ギャンブルなど)である場合、経緯を記録する
■荷物をまとめ身軽になる
■問題をひとりで抱え込まず、助けを求められる相手を確保しておく
■心理的負担を低く見積もらない

まとめ

長距離走と考えながら、一緒に伴走してくれる信頼できる相手を見つけ、しっかりと自分の生き方全体を見つめ直す機会となれば離婚も決して悪い結果になるわけではないだろう。もちろん離婚することをやめる道だってあるわけで、保留や棚上げしておくことだってできる。選択肢は多くあることに気付くことができれば広い視野で相手と向き合えるかもしれない。

あなたがあなた自身でいられるための選択肢を選ぶのだから、そこに間違いはないと思うし、自分の気持ちを大切にすることがなにより大切だと思う。

ふと離婚に関するメンタルヘルスについて記事が書きたくなった令和一発目の記事でした。今年もよろしくお願いします。




本紹介:バツイチの子供たちへ

ふと本棚を見上げてなにか本を紹介したいなと目に飛び込んできたのがこの一冊の本。15年ほど前の心理学の講義で紹介され、なって当時の古本サイトで探して購入したこの書籍。
当時、虐待や愛着障害に関する本を読みあさっていた時期であり、支援や保護に関する知識を勉強していたが、当事者、特に子供に焦点を当てたインタビューは珍しかった。この本ではバツイチの子供にインタビューし、子供が感じる葛藤や親や家族のかたちを記録したもの。

「読むべきなのは、大人たちのほうだ」とはじまるこの本は、まさに大人の読み物。離婚問題で取り上げられるといえば、シングルになった母親のその後や、モラルのない夫や虐待などを繰り返して苦しい思いをする家族というのが定番だろう。しかし、この本ではバツイチとなった子供たちに焦点を当て、その生きづらさや苦しさをインタビューしまとめられたものだ。
第一章/宿命
第二章/血縁
第三章/目撃
第四章/親権
第五章/再婚
これらの目次から構成され、その内容は咀嚼するには時間がかかるものが多かった。わたし自身この本を読みきるのに数ヶ月かけた思い出がある。
それほどまでに、読むのにエネルギーがいる書籍だ。

 

第一章では、子供の視点から家庭が壊れていく様が描かれていたり、なるべくしてなった離婚問題や家族内の葛藤が表現されている。

第二章では、血というしがらみが、子供だけでなく周りをも巻き込む問題に発展していく様子が描かれる。

第三章では、バツイチとなった子供から見た親の姿が描かれるだけでなく、父性、母性、両親像が子供に与えた影響がまとめられていた。

第四章では、親権という大きな拘束が兄弟姉妹を引き裂き、本当の母親との再会や拒絶に関して語られていた。

第五章では、再スタートに向けたそれぞれの葛藤と受け入れがたい事実とそれを飲み込む子供の大変さについて迫り、家族とはなにかを考える。

まとめ
読むごとに心のエネルギーがゴリゴリ削られる読み物となっており、人によっては嫌な記憶が思い起こされるものになるかもしれない。ここの描かれているインタビューはまさに生の声。痛々しくも生きていく上で、親の都合とも言われるバツイチの問題に子供が振り回されている現実がまじまじと伝わってくる。きっと今でさえ、声にならない声がどこかで上がっているのだろう。
離婚問題は確かに親の問題ではあるが、その結果子供にどんな影響が出るかについても親は熟考しなければならない。
「親だって人間。自分の生き方を好きに生きたい。」思いも大切ではあるが、周りに与える影響も考慮に入れて、自由と義務はしっかり果たしていきたいものだ。