精神保健福祉センター

助けを求める場所

このサイトを見ている人たちは,いくらか依存症に関する知識を持っているか,自分の周りにそういう依存に近い人間がいる人か,はたまた当事者たちがほとんどだろう。そうでもない限り基本的にこういうサイトは一般人はあまり積極的に見ない。我ながらなぜこうもニッチなサイトを作ってしまったか頭を抱えるところである。

それはさておき,今回はタイトル通り依存を抱える者が助けを求める場合に,どこにつながることが最善手であるかについて考えよう。

精神保健福祉センター


まず答えはこれである。これに尽きるといっても過言ではない。そもそも依存症に関する治療について専門的に扱う病院やクリニックが日本にどの程度あるかご存知だろうか。一般的な精神科の中では約3割ぐらいが統合失調症に対応していることは有名であるが,果たして依存に関する専門病院はどの程度あるのか。
ズバリ
1割以下である。
そもそも依存症の治療を取り扱う専門病院が日本の中には極端に少ない。
その原因の一つに依存症患者は取り扱いにくく,面倒な奴らが多いという誤解が
多少あるかもしれない。
(私見)ただ,本当は面倒な奴らなのではなく,本人たちは困っているのだということを支援する側が理解しておかないといけない。
多くの人の中に依存症者に関する固定概念が今でもあるのは確かだ。一般市民だけでなく病院などのコ・メディカルに関してもその誤解を払拭できていないスタッフは多いと感じる。
つまり,回復していく上で,
最低限の依存に関する理解者と出会うことが最初のステップとなるだろう。

各都道府県にある精神保健福祉センターの役割は,こうした回復に向けて動き出した当事者や家族に対する最初の関わりを持つ施設だ。精神保健福祉センターは公的機関であり,お金は原則かかることはない。相談に行ったり資料をもらったりと自分が動けば動くだけ支援が受けられる。東京都などの主要都市にはこのようなセンターが2~3つほどあり,随時来所者への支援について相談体制が整っている。(ひとこと電話で予約はしておくとより丁寧に教えてくれるぞっ!)

そもそもどんなところ?

精神保健福祉センターは精神に特化した保健所だと理解していい。多くの精神疾患に関する知識を持ったスタッフが対応し,来所した人の住む家の近くの専門病院を紹介してくれたりする。
依存症当事者は自分の依存の病気に関して否認するものが多く,来所に結びつかない場合も多い。そういった中で,まずは家族が利用できるのもこの施設のメリットといえる。
家族に依存症がいると家族は疲弊している場合が多い。その状況を打破するためにも精神保健福祉センターは治療への第一歩となるだろう。なかには月に1回程度家族会が実施されている精神保健福祉センターもよくみかける。

守秘義務の問題

依存症に関する誤解のひとつに,「家族が違法薬物などを利用していた場合警察に通報されて逮捕されるのではないか。」という不安がつきまとう。
結論から言うと通報されない。
しかし,アルコール酩酊状態や興奮状態,自傷他害の恐れや,命に関わる場合は除かれるが,基本的に精神保健福祉センターでは通報義務はない。
自身が依存の問題を抱えているのであれば安心して話せる場所がそこにはある。

重要なのは当事者や家族が困っているということをしっかりと伝えること
5年ほど前から精神保健福祉センターなどでは,困っている当事者や家族に対して刑事的な罰を与えるのではなく,治療につなげる流れができつつある。だからこそまずは安全な公的機関に頼ることをおすすめする。なぜなら依存の問題は,ひとりでは解決できない依存(アディクション)の反対語は自律や自由などではなく,コネクション(つながり)であることはよく言われているものである。

ひとこと言いたいのは,違法薬物を使って困っている当事者は,やめる気があるうちにシラフのうちにつながることをおすすめする。違法薬物を使ってからだと精神保健福祉センターなどの力を借りようという意識はどこにすっ飛んでしまうからだ。

また,依存に関する専門病院が少ない中で普通の?精神科に行ってしまうと結果的に病気に関して理解されなくせっかくつながった病院で挫折体験を味わってしまう。それだけは避けたい。依存の治療では,治療につながり続けることが回復過程では重要になる。せっかくつながった縁を大切にしてほしい。

今回は割と真面目な社会資源についてつらつら書いたわけだが,たまにはこういうものもいいなと感じた。依存問題を考える上で使える社会資源は使っていったほうがいい。それでも多くの依存症者は失敗を繰り返してしまう。しかし,つながっている人ほど回復に関して一歩も二歩も進んでいるといえよう。