アルコール依存症と言われて想像するのは、飲んだくれやからみ酒、街で寝そべっているサラリーマンが一般的かもしれない。
しかし、それは極めてわかりやすい例だろう。
私が会ってきたアルコール依存症の人たちは、概ねまともだ。
飲まなければまともな人という表現がちょうど合うだろうか。
飲んでいない彼らは、物腰が柔らかく、丁寧な物言いで社会性やコミュニケーション能力が高い人も多かった。
一見しただけでは依存症であるかどうかは分からず、まともな人が多かった印象がある。
彼らは化ける。確実に化ける。
一杯のビールが彼らの人格を変えてしまう。
断酒は一生の問題だと当事者たちが話すように、今日一日飲まないために全力を注がなければ、いとも簡単に再飲酒(スリップ)してしまうことを彼らはずっと前から知っている。
今断酒を継続している人たちは、一杯で止まらなくなることを認めている。「この一杯だけ」では止まらないからこそ、断酒を続けることが回復につながる。
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再飲酒をできるだけ遠くに持っていく
回復過程で再飲酒(スリップ)してしまうことはよくある。
ただし、重要なことは、スリップしたからといって諦めてはいけないということ。
できる限り再飲酒を避け、次の一杯を遠くに持っていくことが断酒を継続していくことにつながる。
しかし、多くのアルコール依存症者が、一杯の過ちで断酒することを諦めてしまう。それはきっとこれまでの努力が泡のように消えてしまったかのように感じるのかもしれない。
ただ、これだけは確実に言える。
依存症は意志の強さでは治らない。
意志の強さだけではなく、まずは、諦めず再飲酒(スリップ)を遠くへ持っていく「工夫」を少しするだけでいい。
依存症を理解するためにオススメ書籍
「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか
■著書 松本俊彦
薬物、アルコール、ギャンブルなど幅広い依存症者たちに共通する「助けて」が言えない背景に目を向け彼らの困り具合を知ることでその回復の手助けとこれからの人生について一緒に考えていく作品
【季刊[ビィ]
はまった理由《依存症回復者80人の声》
多くの依存症に関する体験談をまとめ、なぜハマったのか、なぜそこから這い出せなかったのか、そして、何がきっかけで回復に向かっていくのかをまとめた作品。自分一人じゃないってことが体感的に理解できるオススメ本。
【季刊[ビィ]「依存症」偏見とスティグマ―私たち、黙っているのはやめました
依存症に根深く刻み込まれている偏見とスティグマ(刻印)を当事者たちはどのように克服していくのか。依存症に関する世間の理解のなさに当事者、支援者、そして家族は黙るのをやめ行動に移してく。回復するために必要なエネルギーが詰まっている本。