躁うつ病のサインを見逃すな!双極性障害の治療と実際

「人をまくしたて、自分が決定したことになんら確信が持てずともそれを曲げず、罵倒したと思えば自分のペースで仲直りしたと勘違いし、関係を築いては自ら破壊し、いったいあの人は何がしたかったのだろうか。いつも何かに追われているようで、止まることに恐怖すら感じている様子だった。」

隔離室の強化ガラスを挟んで、私と双極性障害(以下躁うつ病)者との出会いはそんな感じから始まりました。当時の私が感じた病気と回復についてのお話。

そもそも躁うつ病って

気分・感情が高まったり、逆に気分がズンと沈んだりと感情の振れ幅が大きく、躁状態とうつ状態を繰り返す脳の病気のこと。

特に激しい双極性を持つのがI型で、周りから見ても一目瞭然に活動的になる。誰かれかまわず話しかけたり、元気すぎるという理由では納まりがつかないぐらいの病的な状態がそれにあたる。睡眠時間を惜しんで何かに没頭したり、ひとつのこだわりに固執し、金銭感覚が狂う人もなかにはいる。

周りの意見など聞く耳を持たなくなり、仕事などもその場の気分・感情で辞めることだってある。躁うつ病を病気と捉えられず、自分の性格の問題と決めつけたりするなど、多くの物事に対して視野狭窄している状態。

 

双極性II型は、軽い躁状態とも言われ、数週間〜数ヶ月をひとつの流れとして、躁とうつが波のように訪れる状態の人も多い。うつ病的な気持ちの揺れ動きも主な症状の一つであり、何もしたくない軽いゆううつな気分から、布団から立ち上がれないほどの気持ちの落ち込みや、食欲低下、興味関心がなくなることも症状のひとつだ。I型に比べて、躁のエピソードよりもうつ感情が強く出る人も多く、どちらの精神疾患も中学生から中年期まで幅広い年齢で発症する病気といえる。

強化ガラス越しのあの人は・・・

怒りの感情はきっと誰に向けてでもよかったのだと思う。誰よりも偉くなったような口振りで話すあの人は、こちらを攻撃することで自分を保ち、抑えていたのかもしれない。きっと何度も再発を繰り返す中で、多くのものを失ったり壊したりしてきたのだろう。治療につながり回復に向かおうとしているあの人に、当時の私はネガティブな感情しか向けられなかった。

自己中心的に振る舞い、人を罵倒し、話題を奪い、多弁でこちらの思いなど受け止める気もなかったその人を外来の待合室で一度見かけた。

頭を伏せ、一度も顔をあげる事もなく、家族に手を引かれて歩いていたあの人の姿に、強化ガラス越しにみた面影は一つもなかった。

あの人の躁状態はきっと病気がそうさせていたのだろうと思えた瞬間だった。
思いつきで自傷行為や自殺企図を何度も繰り返していたのもきっと病気がそうさせていたに違いない。

躁うつ病の治療とは

躁うつ病は再発しやすい病気だといえる。
寛解(病気の状態がほぼ消失し、コントロールできている状態)に至るまでには長期的な治療が必要になるし、そもそも
正確な診断を受けるまでに数年以上かかる精神疾患ともいえる。

早期発見が重要な課題になると同時に、家族の協力をいかに治療につなげるかが鍵でもある。しかし、躁うつ病患者の中には、すでに家庭関係が壊れている人たちや自ら家族との縁を切っていった人も多く、家族以外のパートナーなどの協力者がその役割を担っている部分もある。

また、躁うつ病の治療には、薬物療法や精神療法が選択されやすい。
適切な治療を継続していけば、症状をある程度抑えて普通の生活もできる。一人で回復していくことには限界があるのも事実で、治療には大切なポイントが3つある。
病識を持つこと(病気に関する理解を深めること)
治療に参加し続けること
躁うつのサインに気づくこと

病識を持つこと
病識を持つことは、どの精神疾患においても大切なことである。
しかし、誰しも「あなたは病気です」と言われていい気持ちにはなれない。とはいえ、躁うつ病は、本人が自覚しにくい病気でもあり、「行動化」が顕著で、逆に言えば周りから見ると発見しやすい病気ともいえる。当事者は精神疾患の再発に気付きにくく、周囲からの声かけが回復へ足掛かりとなる。

治療に参加し続けること
躁うつ病患者の中には、自己判断で通院をやめてしまう人もいる。うつ期に入れば「行動化」は治ることから、治療につながる人も多い。躁状態の期間は、ブレーキが壊れた車のように、壁に激突するまで止まれないほどの強引さを兼ね備えている。自己判断で処方薬を止めたり、勝手に調整したりしないためにも治療への参加が回復には必要になる。

躁うつのサインに気付くこと
活動的になり、夜も寝ないで平気な状態になる。異常なまでに話し続けたり、思いつきのアイデアを誇大化させ、根拠のない自信に満ち溢れたり、性的に奔放になる人もいるようだ。要するに、躁うつ病は「行動化」しやすい病気でもある。特に躁状態に入る前には、個別の特徴的な行動が出てきやすいようで、主治医やケースワーカーなどとも症状をまとめておくと良い。

まとめ

躁うつ病は、何より医師による診断が大切だと個人的に感じる。
高まりすぎた感情に対しては、抑制的な薬物療法を用いることだってあるだろう。反対に、落ちすぎたうつ感情には、精神活動を活性化させるような対症療法が精神科にはある。

注意しておかなければいけないことは、うつ病に用いられる抗うつ薬を躁状態の患者に投与すると「さらなる躁を引き起こしてしまう」ような悪い結果にならないように診断と主治医の考えを理解しておく必要がる。

だからこそ、主治医との定期的な診察は、回復において大きなウエイトがおかれる。再発の兆候を見逃さないためにも早めの精神科への受診を勧めたい。

躁うつ病のサインを見逃すな!双極性障害の治療と実際。




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です