ここ最近、芸能界の薬物汚染があらわになってきている。大麻取締法違反で懲役6月、執行猶予2年の判決が出た、KAT―TUNの元メンバー田口淳之介被告や、薬物依存症者向けのリハビリ施設「日本ダルク」の職員でもある田代まさし容疑者が覚せい剤を所持していたとして、覚せい剤取締法違反で逮捕されたことは記憶に新しい。そして、ここに来て女優の沢尻エリカが合成麻薬MDMAを所持していたとして、麻薬取締法違反の疑いで逮捕され、本人も自分のものであることを認める供述をしているという。果たして、なぜこうも急激に芸能界で逮捕者が続出するのか。それほどまでに芸能界に薬物汚染が広がっているのか、はたまたこれは一時的なものかなどをゆるく触れていきたい。
MDMAってなんぞや
化学構造が覚せい剤と類似しており、覚せい剤にも似た効能を人体に及ぼす合成麻薬の一種であり、興奮作用やLSDのような幻覚作用を特徴とする。基本的に錠剤であり、「エクスタシー」や「バツ」、「エックス」などアンダーグラウンドで多くの呼び名がつけられている。また、MDMAはセックスドラッグとも呼ばれ、性行為の際に使用されることもあり、副作用があるにも関わらず、強い快感を求めて若者を中心に広がる傾向がある。副作用は心臓や肝機機能障害といった身体的なものに留まらず、精神錯乱状態になったり、記憶障害を併発したりするなど、深刻な精神的ダメージを人体にもたらす。効果は数時間ほど持続され、注射などの専用の器具がなくても摂取できるため、どうしてもハードルは低くなってしまう。その背景には「注射は危ない、やばい」といった固定観念が存在するのかもしれないが、MDMAは麻薬及び向精神薬取締法により罰則があり、あたりまえのように違法で処罰の対象になる。単純所持だけでなく、譲渡や営利目的などによっては、さらに重い刑罰が課せられるのが薬物事犯の特徴でもある。このように、薬物事案によって法律が若干違っていたり、刑罰の重さも違ってくる。「友達の物を持っていただけ」では済まされないのが現在の薬物事情とも言える。
依存性と回復
MDMAなどは、ヘロインやアルコールに比べると依存性は低い。
以前の記事でも書いたとおり、
精神依存と身体依存について 依存にはこの2つの課題が大きくのしかかる。また、MDMAは覚せい剤と同様に、身体依存はほとんど形成されない。沢尻エリカの逮捕前日の映像を見てみるとわかりやすいだろう。
一見普通に見える。
実際そうだ。手が震えるわけでもないし、精神錯乱状態にも見えない。身なりはとても気遣っており、誰がこれを見て違法薬物を使っているだろうと思うだろうか。
しかしそれは安全を保証するという意味ではない。
多くの人達は勘違いしている。
依存問題は表面に現れにく。この「精神依存」がとても厄介であり、一度形成された「精神依存」は、治療を行っていかなければ回復できない。「薬物を使いたい気持ちはゼロにはできないが、その気持ちを持ちながらも、使う以外の選択をしていきながら回復していくことは可能だ。」ということだ。近年、刑罰よりも治療に重きが置かれてきているのも現代の流れとも言える。
では果たして彼ら彼女らの回復とは一体何なのか。
それは専門機関で治療するとともに、芸能界にももどる居場所を作らなければいけないということだと思う。彼らの活躍の場所を奪ってはいけない。孤立させることは、彼らの回復から遠ざかることにつながる。報道に関しても十分気をつけなければいけない。
薬物報道ガイドラインでは、報道において避けるべきことなどが盛り込まれている。
■「白い粉」や「注射器」などのイメージカットを用いない
■著名人の薬物依存に陥った理由を憶測し、転落、堕落の結果使用したという取り上げをしないこと
■その人の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと
■スクープとして取り扱わないこと
など、一部抜粋するだけでも重要なことが書かれている。
彼らを正当化する気はないが、彼らは人を傷付けるようなことはしていない。しかし、彼らのそばには薬物などがあったことは事実であり、様々な経緯を経て使用に至ってしまったのだろう。単純な快楽目的の使用ではなかったかもしれない。やはり憶測だけで相手を傷付けたり、排除するような社会では回復につながらない。
彼らに今必要なのは安心して治療に向き合うことなのかもしれない。
依存を抱える人たちに共通するような【生きづらさ】が伝わって来る限り、このような依存に関する記事は書き続けたい。