友人、家族、職場、あなたの依存問題についてしっかり話し合える相手はいますか?以前の記事でも書いたとおり、私個人の意見としては、たとえその依存が違法なものであったとしても、通報よりも治療に結び付けることが最善策だと思う。
そのための第一歩としてカミングアウトをいかに上手くして、周りの協力を得るかが回復の鍵となる。
依存症は関係を破壊させるもの
わかりやすいところで薬物依存を始め、ギャンブル(違法・合法)、アルコール、買い物、恋愛、性、関係、物質、精神など様々なものに依存しながら私たちは生きているのは紛れもない事実。これぐらい大丈夫と思っていたものが、その依存中心の生活を送ることになってしまうのが依存症の怖いところ。まさに、本来の自分の生き方ができなくなってしまうこと。大切にしたかったものを簡単に破壊してしまう。本来大切にしたかった優先順位が依存によって変わり、生活がその依存症中心の生活になってしまう。
きっと治療につながるまでにいろんなものを失い、周りに迷惑をかけてしまうかもしれない。しかし一番の犠牲者は自分であることも確か。治療に本腰を入れるときあなたは何にすがればいいのか。はたまた、すがらずに自分で生きていくためにはなにか必要になるか。その時、あなたはどうやってカミングアウトすればいいののか。
依存していることを話すのは負けたような気がしてどうもカミングアウトできる気がしないあなたは少し足を止めていただきたい。
カミングアウトはチャンスか甘えか
家族や周りの人間に依存問題について理解と助けを求めることは自分の問題を認める第一歩となり、依存問題と決別する最大の機会といってもいいだろう。これまで嘘で固めていた偽りの生き方をじっくり認め、本来の生き方を取り戻す大きな一歩でもある。
「もう嘘をつかなくて済む、肩の荷が下りた」など、これまで抱えていた負担がいかに大きかったか実感するだろう。依存症は否認の病であることはよく知られている。だからこそ自分の依存問題を認めるところから始めてみるのもいい。カミングアウトすることで問題解決の一歩が始まるといってもいいだろう。勇気のいる行動であるが、カミングアウトは回復のチャンスというわけだ。
その反面、依存症は甘えだと言う意見も一般にはよく聞く。
「本人の自己責任だ。意志が弱いからそうなったのではないか。甘えでしょ。」などの厳しい指摘があるのも事実。きっと当事者たちは、このような声掛けによってカミングアウトする気持ちすら削ぎ落とされてしまうのだろう。
依存症者は周りに何を期待するべきか
カミングアウトする側は、周りに多くを求めないほうがいい。
なぜなら本当に理解を示してくれる人間は極端に少ないからだ。5人いれば4人は否定してくる、そう思うぐらいがちょうどいい。
私たちが探すべき相手は残りの1人だということを忘れてはいけない。
なにはともあれ、カミングアウトできた自分を褒めてあげることから始めてみよう。きっと勇気のいることだろうし、誰にでもできるわけではない。周りにどう説明したらいいか分からず、眠れぬ夜を何度も過ごしただろう。時には、カミングアウトのことを考えすぎて、日常生活に支障をきたしてしまう人もいる。
それほどまでにカミングアウトというものはエネルギーを使う作業である。
告白によって人間関係が変化したり、友人・知人を失ってしまう人もいるかも知れない。それほどのリスクを踏まえてまで告白した自分を十分褒めてやるほうがいい。
まずは誰にカミングアウトするか
誰にでもカミングアウトすればいいという問題でもない。上述したように、理解者から順を追って告白することがコツといえよう。身近であればあるほど勇気とエネルギーが必要になってくる。SNSなどを活用しながらまずは仲間を見つけることから始めてもいい。
自助グループなどきっかけに、自分の抱える問題を話せる場を必ず持っておくことが回復には大切だ。依存症者にとって否定されない、攻撃されない体験は依存からの回復過程では重要な体験になる。話せてよかったと思える体験を積み重ねることが良質のカミングアウトにつながるのだと思う。
けれども期待はしてはいけない。
家族にカミングアウトしたところで劇的に何かが変わるなんてほとんどない。
受け入れてくれる人などほとんどいないと頭の隅においておきながら、確実に仲間を増やしていってほしい。
一人で依存問題を抱えすぎず、『自力(じりき)』ではなく『他力(たりき)』を知ることも大切。